お金の知恵
もくじ
損失に備える
- 人生は不確実です。病気、死亡、財産の喪失など、さまざまなリスクがあります。リスクが現実のものとなると、損失が発生します。損失に備えておく必要があります。
1) 貯蓄
- 損失に備えるために、貯蓄は効果的な方法です。
- 貯蓄は、たとえば「教育資金」「結婚資金」などのように特定の目的のために行うことができます。また、「いざというときのために」など、“さまざまなリスクに備える”目的で行うこともできます。
- “お金に色はない”といわれます。リスクが現実のものとなり損失が発生したとき、「特定の目的のために貯めたお金」を、「損失をカバーするために使う」(流用する)ことも可能です。このため、お金をある程度貯めておくことは、無駄になりません。
- ただし、流用すると、本来の目的に使えなくなり、ライフプランに支障が出ることもあります。最初から“リスクに備える”目的でお金を貯めておくことも大切です。
2) 貯蓄と保険の違い
- とはいえ、大きな損失をカバーできるだけの貯蓄をするのは大変です。また、貯蓄は少しずつしか増えません。
- これに対して、保険は、損失に備えて保険料を払っていれば、損失を賄うお金がすぐに確保できるという特徴があります。
- 貯蓄と保険にはこのような違いがあります。両者をうまく使い分けることが大切です。
貯蓄と保険を使い分ける~「貯蓄は三角、保険は四角」など
- 貯蓄は少しずつしか増えませんので、最初はカバーできる損失の額が限定されます。これに対し、保険は最初から損失を賄う額を確保できます。このため、「貯蓄は三角、保険は四角」といわれます(下にイメージ図)。
- 貯蓄には「何にでも使える」利点があります。このため、「貯蓄は万能の保険」ともいわれます。しかし、貯蓄が少ないと損失を十分にカバーできません。一方、保険は損失をカバーするお金がすぐに確保できるため、「発生頻度は低いが、発生した場合の損失が大きい」リスクに向きます。ただし、保険料を払った対象となる損失でなければ(=支払事由に該当しなければ)、保険金は支払われません。
- この特徴の違いを理解して、両者を使い分けることが大切です。たとえば、貯蓄が少ない中で要保障額が大きくなった場合(子どもが生まれたときなど)、保険の必要性が高くなります。その後、貯蓄が増え、要保障額が小さくなっていくと(子どもが成長・独立するなど)、保険の必要性は低下していきます。ただし、要保障額が大きいケース(自動車を運転して歩行者を死亡させたときなど)は貯蓄ではカバーできないため、やはり保険が必要です。
3) 社会保険
- 保険には、公的な保険(社会保険)と民間保険があります。
- 社会保険には、年金保険(国民年金など)、医療保険、介護保険、労災保険、雇用保険などがあります。これらは政府によって加入が義務づけられるなどの措置がとられ、わが国は“国民皆保険(皆年金、皆医療保険)”とされます。社会保険は、保険料や税金によって運営されています。
- このため、民間保険の利用を検討する際には、社会保険の内容を踏まえる必要があります。
- 社会保険によってカバーされる内容(範囲・金額)を知る
- 社会保険ではカバーされない内容について、民間保険を利用すべきか検討する
- なお、勤務先の企業が企業保障(企業年金ほか)を設けている場合は、企業保障の内容も踏まえる必要があります脚注21。
4) 民間保険
- 必要な保険には入る
- 必要以上の保険には入らない
- 必要な保険には入っておかないと、いざというときに大変困ります。必要以上の保険に入ると、貴重なお金が無駄になります。
- 民間保険に入る前に、以下の点をよく考えましょう。
- 自分にとって民間保険でカバーすべき事象は何か
- その事象が発生した場合、カバーすべき金額はいくらか
民間保険でカバーすべき事象
- 「事象」とは、たとえば死亡、疾病、交通事故、火災、地震などのことを指します。
- 「民間保険でカバーすべき事象」は、社会保険との関係でいえば、社会保険の対象とならない事象(対象となるかどうか不確かな事象を含む)、対象となるものの保障額が十分でない事象です。貯蓄との関係でいえば、損害額が大きいなどの事情により貯蓄ではカバーしきれない事象などです。
民間保険でカバーすべき金額
- 「民間保険でカバーすべき金額」は、損失額そのものとは限りません。社会保険や企業保障でカバーされる額があればそれを差し引いた額になります。また、貯蓄によって一部をカバーしようと考える場合は、その分も差引いた額になります。
【どのような場合に利用するか】
- 「社会保険等ではカバーされない対象や金額についてカバーしたい」と考えており、かつ、その金額を「貯蓄ではなく(貯蓄だけではなく)、保険でカバーしたい」と考えている場合
【どの程度の金額にするか】
- 「損失額 -(社会保険等でカバーされる金額 + 貯蓄でカバーする金額)」が目安
【注意】
- 自分がカバーしたい対象、金額が、支払の対象となることをよく確認する
- 契約概要、注意喚起情報、ご契約のしおり(約款の重要事項の解説)、約款で確認する
5) 民間保険の基礎知識
- 民間保険の代表的なものは、生命保険、損害保険、医療保険です。
- 大学生としては、以下の知識と判断ポイントを身につけてください。
- もっと知りたい場合、金融広報中央委員会の『金融商品なんでも百科』を活用ください。
生命保険
- 生命保険は、死亡、生存など、人の生命に関連するリスクに備える保険です。
- 生命保険には、3つの基本的な型があります。
- ① 死亡保険・・・・・・・死亡、高度障害状態となった場合に保険金が支払われる
- ② 生存保険・・・・・・・特定の時期まで生存した場合に保険金が支払われる
- ③ 生死混合保険・・・死亡保険と生存保険を組み合わせたもの
- 生命保険には、以下のような商品があります。
【保障に重点をおく保険】
- ① 定期保険・・・保険期間を定め、定めた期間内(満期まで)に死亡または高度障害になった場合のみ、保険金を受け取れます。満期保険金はありません。
- ② 終身保険・・・保険期間が終身(一生涯)です。死亡したときに保険金を受け取れます。
- ③ 定期保険特約付終身保険・・・終身保険に、特約として定期保険を付加した保険です。特約期間中は定期部分が上乗せされ、特約期間終了後は終身部分のみとなります。
【保障と貯蓄を組み合わせた保険】
- 養老保険・・・保険期間内(満期まで)に死亡すれば死亡保険金、満期まで生存していれば死亡保険金と同額の満期保険金を受け取れます。生死混合保険です。
【貯蓄性のある保険】
- 学資保険・・・満期を18歳などとして保険料を払い、満期に保険金を受け取り学資にあてます。契約者(親など)が満期前に死亡すれば、その後の保険料が免除されます。
【投資性のある保険】
- 変額保険・・・運用状況により保険金額等が変動し、そのリスクは契約者が負います。死亡保険金には基本保険金額が保証(最低保証)されます。有期と終身があります。
- どのような商品を選ぶかは、保険に入る目的次第です
-
- たとえば、死亡に対して遺族の生活費の保障を得たいのであれば死亡保険に加入し、保障に重点を置いたものを選ぶのが適切です。保険金額は、遺族の生活に必要な金額から、社会保険から支払われる金額(たとえば遺族年金)などを差し引いた金額が目安となります。なお、内容面とともにコスト面にも留意しましょう(企業等の団体割引が利用できないか、掛け捨てタイプの保険の検討、保険料がどの程度保険金に回るかの比較検討など)。
- 貯蓄性や投資性のある保険は、自分の目的に合っているかをよく確認し、他の金融商品(貯蓄目的、投資目的の金融商品)と比較検討しましょう。
スポンサーリンク