もくじ
「MARCH」の学部別ランキングを史上初めて全公開してみました!
今回は、MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)の学部序列ランキングを独断で公開してみました。
まず、MARCHといわれる大学群の簡単な立ち位置から説明したいと思います。下図に首都圏の大学序列を示した。これは、全国300塾・予備校の関係者への取材を基に作成したものです。
そもそも、MARCHとは、最上位私立大学といわれる早慶上智(早稲田大、慶應義塾大、上智大)と、中堅私立大学といわれる日東駒専(日本大、東洋大、駒澤大、専修大)の間に位置している大学です。
簡単に言えばMARCHといっても、学部によって入試難度の差は大きいのです。中央大法学部は早慶上智クラスであるわけだし、国際系学部なども高めの序列となっているからです。
MARCHで頭一つ抜けている「明治」
まずは、下に示した明治大の学部序列ランキングを例にその見方を説明したいと思います。
グーグル上で検索される言葉の種類や数などを分析し、世間の評判が高い学部、地位が変わりにくく、安定しているポジションの学部を最強学部とし、それに次ぐ学部を最強学部候補とした。最強学部が多いほど、該当する大学のブランド力が強いことを示している。
よって、図中において、上位にある学部ほど、大学全体のブランディングに大きく影響する学部といえるのです。これらの学部序列の年々の変化を分析すれば、予備校のデータだけでは予想できない、将来の各学部のポジションや、大学全体のイメージの変化が予想できる。
明治は早慶上智に「最も近い」大学
MARCHにおいて早慶上智に最も近くて人気の大学はどこか。それは明治大であり、代表的指標の偏差値を抜きに考えても同様です。理由は主に3つあります。
1つ目は、検索される言葉の種類が多いこと。MARCHの他4大学の約3倍に及ぶ。検索されている言葉の内容は様々で、有名教授や研究室、最近の出来事、在籍している有名人、大学の雰囲気など、偏差値以外にもさまざまな角度から大学のことが検索され、分析されている。
2つ目は、第一志望者が検索をかける代表的な語数も突出していることだ。難しい、名門、頭がいい、高学歴などの大学ランキングに関連する言葉の他に、人気、人気である理由、芸能人、ディズニー留学などの検索も目立つ。これも、明治大が“学力も高く、充実した学生生活を送れる”という明確なブランドを世間で確立しているといえる。
3つ目は、比較して検索される大学の数の多さだ。MARCHの中ではダントツといえる。国立大なら、横浜国立大、首都大学東京(東京都立大)、東京農工大、千葉大、岡山大、広島大、私立大なら早慶上智などが代表的である。
ブランド力では「明治より立教」かな…?
偏差値でMARCHトップといえば、明治大とともに比較されるのが立教大である。大学を検索する際の言葉の数、種類を分析した場合、明治大に次ぐ勢いとなった。
ただ、幼稚園や小学校も含めた総合的なブランドの場合、立教大に軍配が上がる。それは、立教大のブランドは、小中高のイメージがそのまま一部が大学に受け継がれているパターンが多いということだろう。
結果、明治大と比べ、検索語も細かな部分が検索されている。例えば、キャリア、進路、英語、先輩、●●教授研究室とは、などの入試に関することだけでなく、大学入学後のことについての検索や、さらに近年は、英語を使ったベンチャーに関する検索も目立つ。
検索者は、小中高のぶっ飛んだ(既存の日本になかなかない)教育の大学バージョンを期待しながら大学を見ている部分もあるといえよう。さらに、立教大に興味を持っている人たちは、新しい取り組みや教授などの動向にも敏感だ。
MARCHの中では特定の教授名の検索が最も多く、入学後のことまで考えている人が明治大に比べて多いのではないかと推測される。
「新設2学部が最強」の立教
では、学部の序列ランキングを見ていこう。立教大の最強学部は、2つ。経営学部、異文化コミュニケーション学部である。
これらは、2000年代前半に設置された比較的新しい学部であり、新設学部が最強学部なのは、他大学では見られない面白い特徴となった。
というのも、新設学部は、偏差値が高くなっても、知名度では大学を牽引するほどにはならない傾向が一般的だからだ。
立教大の経営学部と異文化コミュニケーション学部は、偏差値が同大の最上位に位置するだけでなく、中身も大きく注目、評価されている珍しい例といえるだろう。それを裏付けるように、検索される言葉は具体的で、世間の興味の大きさを伺わせる。
経営学部で検索されているのは、カリキュラムや教授名、立教経営、名門、実習、立教異文化、留学といった言葉だ。他大学との比較では、慶應義塾大経済学部、総合政策学部、早稲田大商学部、横浜国立大経営学部などの上位私立、国立大学が上がっている。
同様に異文化コミュニケーション学部は、上智大外国語学部、早稲田大国際教養学部、国際基督教大と詳しく比較されている。これらの難関大学を意識している人がじっくり検索をかけ、志望校の選定を行っている様子が伺える。よって、現在立教大のブランドイメージを牽引しているのはこの2学部だといえそうだ。
観光学部と文学部の注目度は低め
一方で気になるのは、立教大の看板学部というべき、日本初の観光学部と、人気の英米文学専修を有する文学部の注目度が低めであることだ。特にここ10年で経営学部、異文化コミュニケーション学部との比較が増えており、興味・関心がこれらに移ってしまっている。
検索語では、立教大観光学部、旅行業界就職、文学部英米、語学といった、以前から立教大が強い分野がここ5年で低下してしまっている。改めて観光学部と文学部の強みや特徴を見直すことが必要かもしれない。
そして課題のもう一つが、経営学部、異文化コミュニケーション学部以外の学部で上位国立大学との比較、学部の中身の検索が少ない点だ。特に、埼玉県の新座キャンパスにあるコミュニティ福祉学部、現代心理学部がそうである。
明治大はほぼ全学部が全国の国立大学と比較され、学部の中身も検索されているのに対し、立教大は首都圏の早稲田大、慶應義塾大、上智大など上位私立大学との比較にとどまり、首都圏以外の大学との比較が少なかった。
なお、数は多くないが、MARCHで唯一、福岡の西南学院大、愛知の南山大、兵庫の関西学院大とセットで検索されるパターンも見受けられる。特筆すべきは、その数が上智大、東京理科大の数をも上回っていることだ。
もし、今後これらエリアでの広報を強化したら、ブランドの認知が全国に広がり、今の上智大、東京理科大のポジションが立教大になる可能性も秘めているのかもしれない。
【立教大学まとめ】
●経営学部、異文化コミュニケーション学部を軸に、観光学部、文学部の強みを広報
●首都圏以外の国公立との併願者への認知。特にトップ私立大がキリスト教系大学である、福岡市、名古屋市、神戸市、西宮市あたり
英米文学科の強さがダントツの「青学」
次に、青山学院大を見ていこう。一般的には、青山学院大の比較対象になるのは同じキリスト教系の立教大だと思われがちだ。しかし検索を分析した結果、明治大との比較が一番多かった。
分析結果から見ると、その明治大に対する青山学院大の強みは3つ。ひとつは、 “おしゃれ”、 “キャンパスが綺麗”とともに、幼稚園から大学までの一体感などが含まれる。
また、大学以外にも中高、さらに、渋谷や青山の地名とセットで検索されていることが多く、青山学院大の最大の強みとなっている。全国規模でこうした言葉が検索されているのも特筆すべきだろう。
こうした認知は全国的に年々高まっている。ブランド力を上げるには、大学での学びの他にこれらのことまで含めての広報を展開した方が効果がありそうだ。
注目すべきは、関西でも前述の検索が多いことだろう。同地域では関西学院大や甲南大が、おしゃれ、キャンパスが綺麗、幼稚園から大学までの一体感があるという、同様のブランドを持っている。
これらの大学は、いずれも西宮市や神戸市にあり、大阪市の都心にない。そのためか、関西でも青山学院大を特別視したり、憧れる層が一定数出てきたりしているのだろう。
3つ目は、学問を複合的に学べるかなどのキーワードが他大学より多いことだ。したがって、青山学院大学のブランド力は、幼稚園から大学までの総合力と、地名、華やかなイメージと幅広い。学部改組などで複合的に学べる学部を新設してもMARCHの中では一番受け入れられやすい”土壌“があるといえる。
新設2学部が爆上げの青学
では学部序列ランキングを見ていこう。青山学院大の最強学部は2つ。文学部の英米文学科と、国際政治経済学部である。
これらは偏差値で見ても、青山学院大で最上位に位置し、看板学部・学科といえるだろう。驚くのは、英米文学科が、MARCHの学部並みの検索がされて注目されていること。明治大の政治経済、立教大の異文化コミュニケーション学部に匹敵する。これは“英文学の青学“という確固たるブランドが確立しているからだと言えよう。
文系学部で軸となる文学部がしっかりと検索されているのも、MARCHでは青山学院大が唯一であることも記載しておく。一方で、国際政治経済学部は、今のところ最強学部であるものの、その地位はここ5年で低下傾向にあるのはやや注意が必要だろう。
理由としては、近年新設された総合文化政策学部(2008年)、地球社会共生学部(2015年)と比較される場合が多く、これらに興味・関心が移っているとみられる。学問を学べる幅広さ、渋谷区などと協力した実習など、目新しさ、学ぶ授業内容の楽しさなどが注目されているのだろう。
これら新設2学部では、検索数、検索される言葉の数が急激に伸びており、このまま行くと、将来的にはブランド力が国際政治経済学部と逆転し、これらが最強学部になる可能性がある。
一方で課題もある。社会情報学部とコミュニティ人間科学部の認知の低さだ。過去数年間で検索数は伸びているものの、検索されている内容が、“入試で入りやすいかどうか”という大学への“入り口”の検索ばかりが目立つ。学部の中身の検索が極端に少ない。
いずれにせよ、近年多く新設された学部が多いのが青山学院大である。検索者の傾向を見ると、それらの学びの内容に、伝統学部との違いに混乱しているのかもしれない。これらの学部が伝統学部を牽引するブランドを確立できるのかがカギといえそうだ。
【青山大学まとめ】
●大学以外の中高、さらに、渋谷、青山というブランド地名とセットで広報。特に関西
●国際政治経済と総合文化政策学部、地球社会共生学部の住み分け
●新設学部の認知
ダントツの存在の「中央法」
大学の総合ブランドでは明治大がMARCHトップであるが、学部単位でみると、中央大法学部がトップになる。中央大法学部といえば名高い名門学部ではあるが、高いのは偏差値だけではない。
なんと、検索結果の分析では、法学部だけでMARCHの一般的な学部の検索語数の約5倍に達した。学部の序列の位置も、MARCHの最強学部よりさらに上で、早慶上智の学部と比肩するレベルである。
いわゆる、上智大法学部よりもブランド力が高く、比較されている大学も旧帝国大学を筆頭に、一橋大、神戸大、筑波大、横浜国立大、千葉大、首都大学東京(東京都立大)、慶應義塾大、早稲田大など名だたる大学が大半を占め、MARCHの法学部とはほぼ比べられていない。
同大の他の学部は主にMARCH内での学部との比較にとどまっていることを踏まえると、中央大の法学部がいかに世間で特別な存在と認識されているかが分かる。
また、検索されている言葉も特徴的だ。名門、難しい、エリート、かっこいい、頭いいの他に、炎の塔、司法試験対策研究室、カリキュラムなど、検索される言葉の種類でも群を抜き、相当細かい部分まで頻繁に調べられている。
難関資格を軸に公務員なども含まれ、受験前から目的意識がはっきりしていることも特徴だ。
社会科学系学部が強い中央
では、学部序列ランキングを見ていこう。中央大の最強学部は3つ。法学部、商学部、理工学部である。
商学部は、法学部に比べて影が薄めではあるが、公認会計士、●●研究室といった言葉のみならず、広島大、岡山大、熊本大や、長崎大、山口大、福島大といった経済系に強い地方上位国立大学とセットで検索されている。
法学部とともに、入学後に公認会計士か公務員を狙うという層が多めであることが伺え、法学部、商学部共に最強学部にふさわしいといえるだろう。
理工学部は、MARCHのその他の理系学部と大きく異なる特徴がある。弁理士、同窓会、OBの強さというキーワードが一番多いことだ。山手線内の後楽園という立地の良さも手伝い、ここ10年の検索数、検索される言葉の数は安定している。
加えて、近隣の東京理科大、上智大、東京農工大などの上位大学との比較も増えており、人気は上昇傾向と言えそうだ。なお、理工学部が最強学部となっているのは、中央大がMARCH唯一である。
総合政策、国際情報、国際経営の地位が低め
一方で課題はというと、比較的歴史のある総合政策学部や新設の国際情報、国際経営学部の地位が、偏差値の割に低めであることだろう。社会科学系の伝統学部が強いのとは対象的だ。
特に新設2学部は、商学部、総合政策学部とどのように違うのかが頻繁に調べてられている。まだ学部の中身の認知が十分でないといえるかもしれない。
現在の主な比較先は、早慶上智とMARCHの関連学部の他、津田塾大学芸学部、東京女子大、日本女子大、獨協大外国語学部、東洋大国際学部、経営学部、経済学部、杏林大総合政策学部、外国語学部、神奈川大外国語学部などである。
さらに、総合政策学部の検索数、語数の伸び悩みも大きい。主に法政大のグローバル教養学部、さらに東京オリンピックの会場に程近い、千駄ヶ谷の新キャンパスに設置された津田塾大総合政策学部に興味・関心を奪われているようだ。
なお、井上氏によれば、法学部の2023年の茗荷谷への移転により、キャンパスが近い国際情報、国際経営との比較、併願が増え、学部序列も上昇する可能性があると予想している。既存の学部との違いや、中身の認知が進めば、この先10年後、商学部、理工学部とともに最強学部入りするだろう。
もしそうなれば、下位学部の数が減り、総合力でMARCHトップの明治大と肩を並べる位置まで来る可能性があるといえよう。
【中央大学まとめ】
●新設の国際情報、国際経営学部と、総合政策学部の違いなどの認知
MARCH他大学との差を縮める法政
最後に法政大。最強学部は1つ。社会学部である。
法政大で唯一の最強学部となった社会学部は、他学部に比べ、研究室名、授業名などが具体的に検索されている。さらにメディアで有名な卒業生の名前や、過去問対策、参考書などが調べられており、社会学部は他学部より第一志望の割合が高いといえる。
一方、グローバル教養学部も検索がここ5年で順調に伸びているため、将来的に最強学部となりうるだろう。
比較されている主な大学は、早慶上智とMARCHの関連学部の他、津田塾大学芸学部、東京女子大、日本女子大、学習院女子大、獨協大外国語学部、明治学院大国際学部、東洋大国際学部、杏林大総合政策学部、外国語学部、神奈川大外国語学部などで、かつて併願されることが少なかった大学も増えている。
こうしたグローバル教養学部の勢いの理由の一つは、中央大総合政策学部や、MARCHの文学部などの伝統学部、そして津田塾大や東京女子大のトップ女子大受験層から興味・関心をかっさらっていること。同じ系統の国際文化学部も引っ張られて、検索数、検索語数も伸びている。
MARCH唯一のスポーツ系学部のブランド力が上昇
スポーツ健康学部もブランド力が比較的高くなった。偏差値が学内では低い方だが、序列では法、国際文化学部並みとなっている。
その理由としては、同学部がMARCH唯一のスポーツ系学部である事だろう。比較対象には早稲田大スポーツ科学部、筑波大体育専門学群、東京学芸大などの上位大学が顔を並べている。
これらのグローバル教養学部、スポーツ健康学部は、“楽しい”、”リア充“といった言葉も検索され、大学全体の“明るい雰囲気”のブランディングに貢献しているとも考えられる。
一方で、MARCHの中では、認知が低い学部が一番多いのも法政大である。入試難度も高めで人気である人間環境学部や、現代福祉学部、情報科学部、生命科学部の認知が特に低い。これらの学部では、今のところ、学びの内容への興味をあまり持たれていないようだ。
検索内容も、“滑り止め””試験日程“”穴場“といった入学のしやすさに関する言葉ばかりが目立つ。さらに、比較される大学もMARCHの学部より、その下の大学群、日東駒専との比較が多いのも特徴といえる。とはいえ、大学全体で考えると、ここ数年では徐々に学びの内容に関する比較や数は増えつつある。
法政大は、人間環境学部など90年代後半から2000年代にかけて様々なことを学べる複合系学部を多く新設し、大学のイメージを一新させた。その結果、学びの幅はMARCHで最も広くなったといえる。
分析結果は、このような事実がまだ全国的に浸透しておらず、認知が首都圏などに限られている可能性を示している。
一方で、北海道教育大、宮城教育大、大阪教育大、福岡教育大など、特に国立の教育大学を中心に比較するケースも徐々に増えているため、今後ブランド力は上昇する可能性がある。
さらに、現在は数が少ないものの、中高とセットで大学が検索される伸びもMARCHの中では一番である。中高の人気に引きずられて大学の認知が広がっているのだろう。
このままいけば、その“さまざまな学びがある魅力”“中高を含めた都心の大学”というブランドがより浸透し、全国の国立大学の併願者が増えるとともに、難度や人気が上昇すると予想される。もしそうならば、現在のMARCHの立ち位置に変化が起きつつあるかもしれない。
【法政大学まとめ】
●グローバル教養学部、スポーツ健康学部の中身の広報
●人間環境学部、現代福祉学部、情報科学部、生命科学部の認知
上智とMARCH横並びの時代か?
MARCHの各大学の学部別序列を見てきたが、それらを総合的に踏まえつつ、下記では20年先の将来のMARCHの序列を予想した。
注目すべきことは、大きく3つあげられる。1つ目は、MARCH各大学の差が急速に縮まることだ。とはいえ、上位に位置する明治、立教に至っては、青山学院大、中央大、法政大よりも頭一つ抜ける可能性もある。新設学部が看板学部化し、それぞれの大学の強さがより明確になるだろう。
2つ目は、中央大が2番手グループに上昇する可能性がある。現在MARCH最強と言われる法学部、それに国際系学部が看板になり、今より別格感が鮮明になるだろう。
3番目は、MARCHより上位に位置する東京理科大と上智大と、明治大、立教大の差が急速に縮まることだ。場合によっては、4大学が横並びになる可能性もある。