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全国739の進学校からの「オススメ大学」ランキング
やはり首位は「教育力」東大、「改革力」早稲田大、「面倒見」金沢工業大。 新型コロナウイルスの感染拡大の中で行われた21年度入試は、今までにない結果となった。
鳴り物入りでスタートした大学入試改革は、国語と数学の記述式の出題や英語民間試験の活用は中止になった。改革の目玉が中止になった大学入学共通テストの志願者は2万人以上減少し53万5245人にとどまった。
前年に比べて大学入試センター試験時代を含め、過去最大の減少となり、特に浪人生が2割近く減少した。浪人生は入試改革前の20年度、最後の旧入試に現役として挑んだ。
浪人しても翌21年度は入試が変わるためメリットが少ないと判断し、現役で進学した受験生が多かったようだ。ただ、平均点は上がり、初めての共通テストは難化するという予測は外れた。
来年入試はどうなっていくのか。全国の進学校739校からの声を聞いてみた。
9月末から出願が始まりますから、それまでコロナ感染が拡大したら志願者は増え、逆に終息の方向に進んだら減少すると見ています。感染が拡大すると、大学が最後の入試方式として、共通テストの成績だけで合否を決める方式に切り替える可能性があるからです。
次に来年入試も国公立大人気は高くなりそうだ。今年、戦後最大の14%の志願者減となったのが私立大だ。国公立大志望者は受けても、私立大志望の受験生は敬遠し、私立大専願者が増える可能性もある。
一方、大学選びは「学校推薦型選抜や総合型選抜が人気になる」。次いで「現役での進学志向がさらに強くなる」。私立大に限った人気になる入試方式では、トップは「指定校制推薦」続いて「総合型選抜」「共通テスト利用入試」「公募制推薦」の順だ。
コロナ対策は「受験料を一部無料」の千葉工業大が首位となっていて入試での対応の評価は高い。元々、早くからコロナ対策を実施した立教大は、今年から全学部で試験日自由選択制の入試を実施した。
5位の横浜国立大、16位の宇都宮大は、いずれもコロナ禍で大学独自の2次試験を行わず、共通テストのみで判定する入試を実施した。「面倒見が良い大学」だ。トップは17年連続で金沢工業大。
2位は武蔵大、3位は東北大、4位は福岡工業大、5位は産業能率大だった。武蔵大は〝ゼミの武蔵〟といわれるほど、ゼミナール形式の授業が有名だ。このゼミは少人数教育で、今でいう双方向で授業を進めるアクティブラーニングだ。武蔵大は昔から実践しており4年間の必修。来年、国際教養学部の新設を予定している。
「就職に力を入れている」は明治大が12年連続でトップ。学生の就活サポートに力を入れていることで知られ、有名企業に強い。今年の就職先企業を見ると、明治安田生命保険、楽天グループ各38人、SCSK32人、NEC31人、あいおいニッセイ同和損害保険、三井住友銀行各27人、TIS26人、富士通25人など。次いで金沢工業大、九州工業大、法政大、前年14位から5位に上がった福岡工業大、産業能率大の順だった。
ランキングには実就職率(就職者数÷〈卒業生数-大学院進学者数〉×100)が高い大学も多い。卒業生数1000人以上でトップの金沢工業大が2位、3位の国公立大13年連続トップの福井大が9位に入っている。
各地域からの評価を見ると、北海道・東北からは金沢工業大がトップで、関東・甲信越と中国・四国は明治大、北陸・東海は福井大、近畿は立命館大、九州・沖縄は九州工業大を抜いて福岡工業大が高評価だった。関東・甲信越で2位の産業能率大は、ポイント全てがこの地区だ。
「教育力が高い大学」のトップは15年連続で東大だ。2位は東北大、3位は京大で、旧七帝大がトップ3を独占した。4位は公立大トップの国際教養大、5位は大阪大、6位は私立大トップの東京理科大だった。
地域別に見ると、北海道・東北は東北大、関東・甲信越は東大、北陸・東海は名古屋大、近畿は大阪大、中国・四国は京大、九州・沖縄は九州大。地元大学への評価が高いのが特徴だ。
「改革力が高い大学」では、早稲田大がトップ。それまで5年連続1位だった近畿大を抜いた。早稲田大は政治経済学部をはじめ、積極的な入試改革が高い評価を受けたようだ。
入試改革を実施した大学では、昨年の10位から4位の立教大、14位から7位の青山学院大、27位から10位の千葉工業大、26位から15位の上智大など躍進が目を引く。早稲田大、青山学院大、上智大など、国公立大と同じように、共通テストと大学独自試験の選抜に変えたところの評価が高かった。
2位の近畿大は今年で8年連続志願者日本一を達成。来年、情報学部を新設する。まだまだ改革の手を緩めてはいない。昨年より順位を上げた17位の慶應義塾大は、東京歯科大との統合により歯学部設置が動き出したことが評価されたと見られる。
「小規模だが評価できる大学」だ。トップは国際教養大、次いで武蔵大、国際基督教大、産業能率大、会津大、津田塾大の順となった。いずれも文系の小規模大学だが学生と教員の距離が近く、特色ある教育で高い評価を得ている。
今年の特徴は女子大の躍進だが昨年の10位から6位にアップした津田塾大、37位から11位の神戸女学院大、265位から14位の恵泉女学園大などすべて順位を上げている。就職に強い女子大に注目が集まっている。
昨年から順位をジャンプアップさせた恵泉女学園大は、東京都多摩市にある人文と人間社会の2学部の大学だ。園芸教育に力を入れていることで知られ、学生は毎年、野菜や花を育てている。
「入学後、生徒を伸ばしてくれる大学」だ。トップは東北大、2位は東京理科大、3位は金沢工業大、4位は東大、5位は大阪大の順となった。東北大は「面倒見が良い大学」「改革力が高い大学」がいずれも3位と、評価が高く人気もある。
予備校関係者は「東日本の国立の難関総合大学となると、東大の次は東北大になることもあり首都圏でも人気が高い。来年の入試で人気は情報系や医療技術系だ。トップは2年連続で明治大、次いで早稲田大、立教大、青山学院大、慶應義塾大の順だ。
6位に国立大トップの東北大、7位に昨年の19位からアップした上智大となった。首都圏の私立総合大が上位を占める。やはり入試で5教科7科目の国立大は敷居が高く、3教科の私立大なら手が届きそうな感じがある。
生徒に勧めたい大学は国公立大トップは7年連続で東大、次いで京大で、3位が東北大だった。トップ10には旧七帝大全校と東京工業大、一橋大、公立の国際教養大が入っている。難易度の高い大学が上位に来ていることが分かる。
一方、私立大はトップが早稲田大、2位が慶應義塾大で、この2校が3位以下に大差をつけた。以下、国際基督教大、東京理科大、明治大、上智大の順だ。やはり難易度が高い大学が上位に来ている。
最後は「来年入試で人気になりそうな学部」についてだ。トップは情報系で56・4%、次に看護の51・2%、以下、医療技術系、経済系、工学系と続く。理系人気が高く、さらに医療系人気が高くなることは確実の情勢だ。
来年入試も安全志向の入試になることは確実で、地元志向も高まりそうだ。コロナ禍はやがて収まるので、こういった時こそ、強気な受験を心がけ、一般選抜だけにこだわらず、年内の総合型、学校推薦型選抜も活用するほうがいい。最後に「入れる大学選び」ではなく、「入りたい大学選び」を大切にしてほしい。