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共通テストは「シンプルなものにすべき」詰め込み過ぎは受験生に負荷をかけているだけ
大学入学共通テストの会場(東京大学)「難化」が話題になった今年の大学入学共通テスト(以下、共通テスト)。数学I・Aや日本史Bなど7科目で、前身の大学入試センター試験を含めて過去最低平均点となった。
2年目を迎えた共通テストについて、「欲張っていろいろな要素を詰め込み過ぎている」と疑問を呈する声は多いようだ。
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「今回の出題は、大学入試センターが目指した『思考力を発揮して解くことが求められる問題』という狙いと、ズレを生じてしまっているのではないでしょうか」
「特に、平均点が低かった数学の出題では、前振りの説明文が長いうえに、そこに対話文が挟み込まれ、問題を解く前の段階でかなりのことを行わなければならなかった。
つまり、数学の問題を理解して解く、というステップとは異なるものに時間を費やさなければならなかったと、多くの教育関係者が指摘しています。
果たして、それが数学の思考力を測ったことになるのか。その因果関係がきちんと検証されたうえでこの問題がつくられたのか。疑問に思います」
例えば、今回予備校関係者から「かなり戸惑った受験生が多かった」という声が上がったのが、数学II・Bの第4問だ。この問題は歩行者と自転車の相互の動きについて問うもの。歩行者と自転車、それぞれの動きを説明する文章の後に「太郎と花子」の会話文があり、この2つの文章が絡み合うなかに設問が盛り込まれている。
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試験内容については「専門外なので私見であるが」と前置きしつつ、「思考力を測るのであれば、それに見合った受験時間が必要ではないか」という。
「今回、多くの受験生が『時間が十分になかった』と言っていた話をよく聞きます。思考力にもいろいろありますが、回答時間が足りない受験生が多かったのであれば、頭をパパッと速く回転させる思考力しか測れていないのかもしれません。
好意的に見れば、問題をつくる側も、受験する側も慣れていなかった結果だと思いますが、大学入試がそれでいいのかという疑問があります」
「難問」と指摘された数学II・Bの「太郎と花子」問題
■受験生に負荷をかける指向性
今回の入試では日常生活を題材にした問題が複数出題された。その一つに中村教授は「違和感を覚えた」という。それが先に挙げた数学II・Bの第4問。問題文では、「歩行者は時刻0に自宅を出発し、正の向きに毎分1の速さで歩き始める」といった設定が出てくる。
「問題文にある歩行者と自転車の速度に『時速何キロ』とか、単位が入っていなくて不自然なんです。歩行者や自転車の動きをリアルに想像して問題文を理解しようとすると、いきなり『1』とか、単位のない数字が出てきて、抽象的なシチュエーションに持っていかれます。
速度の単位が入っていないのには何らかの理由があったのかもしれませんが、あえて現実的なシチュエーションを想定してつくった問題に抽象的なものが入り込んでいる。問題としての一貫性がないと思います」
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今回の共通テストは、「欲張っていろいろな要素を無理やり試験にのせて受験生に負荷をかけることで、さまざまなことを成し遂げようとする指向性が強すぎる」。大学入試は「シンプルなものにすべき」。
「入試では基礎能力を中心にしっかりと測る。大学の入学者選抜はそれで十分です。なのに、思考力を測りたいというお題目のために、たくさん文章を読ませたり、無理に対話文をねじ込んだりして受験生を混乱させている。
それで、時間切れになってしまうくらいだったら、入試問題はシンプルなほうがいい。思考力を伸ばしたいのだったら、大学教育でそれをカバーすればいい。ゼミや実験・実習、卒論で高度な思考力を育成することは十分可能です。そのための予算と人を大学に振り向けたほうがずっと効果的でしょう」
センター試験が共通テストへと変わって2年。共通テストを含む今回の大学入試改革は、これまでの「知識中心型」から「思考力」を重視する方向性へとかじを切ることを意図したものだ。その背景にあるのは、
「生徒が未来社会を切り開くための資質・能力をいっそう確実に育成することを目指す」新しい学習指導要領だが、共通テストで測る力は、よりよい社会を切り開く力につながるのか。
「いま国は、共通テストのように入試制度に様々なものを盛り込むことで、子どもたちに勉強させて、それが世の中をよくすることにつながる、という論理の教育政策ばかりに力を入れすぎている印象があります。
いま、話題になっている2025年度入試から始まる新教科『情報』もそうだし、23年度都立高入試から導入される英語スピーキングテストも同じ流れに見える」
ますます増える受験生の負担は、同時に、未来の受験生を育てる中高生の保護者にとっての負担にもなりうる。子どもの受験準備をどう進めればよいかという点でも、試験の動向に注視していきたい。
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aera抜粋