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東大16人・京大は2人。総理大臣輩出この違いを考える
総理輩出、東大16人に対し京大は2人 この違いは?
政界、官僚には東大、京大出身者が多い。ただ、総理大臣は東大16人に対し、京大は2人。この違いは何なのか? 東大と京大の実力を比べてみた。
日本で最初の「東大出」の総理大臣は、24代の加藤高明(法)だ。名古屋藩の下級武士の子として生まれ、法学部を首席で卒業し、三菱会社、外務省を経て首相になった。
初代の総理は伊藤博文だが、伊藤を含め23代までの総理は、海軍大学校を出た加藤友三郎を除いて大卒ではなく、私塾や藩校などで学んだ人々だ。
加藤高明以降、東大は続々と総理を輩出していく。現在までに16人。これに対し、京大の総理は2人だ。なぜ、東大出身の総理大臣が圧倒的に多いのだろうか。
「東大は官僚養成学校として創設されたため、高級官僚をほぼ独占的に輩出してきました。官僚から政治家になるのも明治からの伝統で、東大卒の国会議員、総理大臣はおのずと多くなるのです。
戦後の東大卒の総理大臣11人のうち8人が官僚出身です」 京大出身の総理たちもなかなか個性的だ。初めて京大から総理になったのは戦時下の近衛文麿(法)だ。
45歳の若さで総理となり、「青年宰相」と国民から大歓迎され、3度にわたって組閣した。もう一人は戦後、「所得倍増論」を唱え、高度経済成長を実現した池田勇人(法)だ。「権力の側に同窓が多い東大と違って、京大は自分の力でがんばらないといけないという覚悟のようなものがあるかもしれません」。
■猛勉強しなくても入れる? 東大に増える普通の子たち
東大前期に続き、後期の合格者が発表された。2013年は、県立浦和(埼玉)や北野(大阪)、西(東京)など、公立伝統校が大きな存在感を示した。しかし、公立名門校の魅力は、進学実績だけではない。
公立王国・愛知県の中でも岡崎は今年、東大に32人、京大に19人の合格者を出した。進路指導主事の藤原波一教諭は、「受験指導だけにとらわれず、ときには大学レベルの質の高い授業をしています。
生徒たちは興味を持つと生き生きして、授業が終わっても、黒板の周りに集まって議論していることもありますよ。部活も文化祭もとても熱心です。仲間と話し合い、ときには対立することで心は磨かれる。そうした子が大学に行っても伸びるのだと思います」。
東大11人、京大27人と両大に多くの合格者を出した岐阜(岐阜)も、文武両道の校風だという。「自立と自律を重んじ、部活動もとても盛んです。
校訓は『百折不撓(ひゃくせつふとう)』。何度失敗しても立ち上がる強い心を持ってほしい、君たちは将来は日本のリーダーにならないといかん、と常に語りかけている」。
「少子化で子供の絶対数が減る中、東大や京大は、もはや特殊な進学校で猛勉強をしないと入れない大学ではなくなってきている。
公立で普通に学校生活を過ごし東大に行く、そんな流れはこれから加速すると思う。多感な時期に、幅広くいろいろな人がいる学校に通い、
地域の中で育つことで人間関係力が身につく。いい意味で普通の子たちが入ってくると、東大や京大にも新しい可能性が生まれてくると思う
2013年東大合格者数No.1の公立高は?
2013年、全国の公立高校で最も多い46人の東大合格者を出したのは県立浦和だ。東大のおひざもと、都立の活躍もめざましい。西は東大に34人、日比谷は29人、国立は22人が合格した。
京大では、公立の合格者数トップは北野で、昨年より10人多い65人が合格した。
近年、公立がなぜ好調なのだろうか。「2008年のリーマンショック後に高校受験をした層は、私立から公立に進路を変えた人がかなりいるとみられます。
公立は学費が割安なこともあって人気は底堅いし、学区などの制度改革で実績を伸ばしている。
上位の私立中高一貫校では高校進学時の募集を停止するところが多く、受け皿も少なくなっている。そんな中で、優秀な子が公立上位校を目指すようになってきたのではないだろうか」
さかのぼると、都立の低迷は、都が1967年度に「学校群制」を実施し、学区ごとに定められた高校群を受験する制度にして以降だ。志望高校を自由に選べなくなって人気も進学率も急降下。
東大合格者を都立全体で約760人、トップだった日比谷単独でも200人近く出したこともあったのに、04年には都立全体で合格者56人にまで没落した。
復活のきっかけは、01年、都が進学指導重点校を指定したことだ。予算や人員を重点的に配分し、進学対策に力を入れた。
03年に学区がなくなり、05年には都立中高一貫校も開校した。以降、都立(区立含む)全体の東大合格者数は年々増え、今年は139人になった。
やる気と実力のある先生を公募したり、予備校に学んで進学指導のスキルを身につけていただいたりしているようだ。
重点校とともに、都立中高一貫校も良い成果を出しています。経済的に苦しいから都立、というのではなく、私立も含め、多くの選択肢の中から選ばれるようになってほしい。