東京農大中高 進学実績伸ばすGMARCH合格者は2年で100人増!
東京・世田谷区の東京農業大学第一高等学校が大学進学実績を伸ばしており受験界から注目を集めている。

もくじ
2科目の午後入試実施で難関中受験者の併願を呼び込む
東京・世田谷区の東京農業大学第一高等学校が大学進学実績を伸ばしており受験界から注目を集めている。
同校の公式ホームページは“農業”をイメージさせる緑色が独特の印象を与えているが、「進学実績」のページに移ると「国公立大学・難関私立大学合格者数計495名 過去最高合格実績」という青と赤の大きな文字が誇らしげに登場。
国公立大学、早慶上理、GMARCH(学習院大学、明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)の合格者数推移を表すグラフを見ると、
2019年(卒業生346人)が合計376人、2020年(同344人)が同440人、21年(同336人)が同495人と増加の一途。
個別に年ごとに見ると、国公立は73→62→70、早慶上理は93→100→113、GMARCHは210→278→312という成績で、首都圏の有名私大合格者を着実に増やしていることが分かる。
特にGMARCH合格者は2年で一気に約100人増という躍進ぶりだ。
「進路指導部からのメッセージ」を読むと、「本校は近年進学実績を伸ばしており、多くの生徒が国公立や早慶上智レベルの大学を目指すようになってきています。
これは先輩の背中を見て、挑戦してみようと考える生徒が増えてきた証です。我々教員は生徒達の自主性を大切にし、
そのチャレンジを見守りながら、生徒から要望があった時に的確なアドバイスができるよう入念に準備をしています」と徹底サポート体制をアピール。
高等部のカリキュラムとしては、国公立5教科7科目に対応できるよう高校2年次で大学入学共通テストのレベル・範囲をすべて終了することを目指している。
高校1年次においては国語・数学・英語・地歴公民・理科の5教科を中心に基礎力を蓄積。高校2年次では地歴公民・理科の必修選択によって文系・理系の方向性を出し、
高校3年生から文系・理系に分かれて各自の進路に必要な科目を履修する、という。
東京農大と言えばほとんどの人が名物「大根踊り」をイメージするだろう。
正式名称は「青山ほとり」という応援歌で、応援団の総監督と学生が実際の踊りを親子に体験してもらう有料講座まで設けられている。
しかし、在校生は「大学名に“農業”が付いていますが、農業に関わることは特にありません」といい、実際には新興進学校として御三家や準難関校に次ぐポジションまで上がってきた。
大手進学塾の日能研が昨年末に公表した22年中学入試予想R4(合格可能性80%)偏差値一覧によると、
2月1日に入試が行われた男子御三家の開成が72、麻布が67、武蔵が66であるのに対し、
東京農業大学第一高等学校中等部は59。偏差値58の逗子開成、中大横浜、桐朋、本郷、同57の法政大学中学の57を上回っている。
2月1日の午後に入試を実施 入試科目は「算数・国語」と「算数・理科」の選択制
ただ、同じ2月1日入試実施と言っても農大中と他校では決定的な違いがある。それは農大中だけ入試を午後に実施しているのだ。
この日の集合時間は午後2時15分、同3時15分、同4時15分の3回設定。しかも、入試科目は「算数・国語」もしくは「算数・理科」の選択制だ。各科目とも40分100点で計200点満点となる。
一体どういう狙いがあるのか。「東京や神奈川の難関中学校の入試は2月1日から3日、4日あたりの午前に集中しているため、同じ時期に午後入試を行えば難関校受験生の併願が期待できます。
小学校受験生にとって午前、午後の連続受験は心身への負担が大きいため、2科目とすることでその分、気楽に受験してもらえるという作戦です。
このように午後に2科目入試を実施する私立中は増えていますが、特定の2科目が得意な受験生が集中するのでその分、合格点数ラインが上がり学校によっては難易度も高くなります」(進学予備校講師)
午後入試を実施する学校には他にも魅力があるという。
それは特待生制度だ。農大中は第1回(募集定員90人)を2月1日午後に、第2回(同60人)を同2日午後に実施。
第3回(同25人)だけ4日午前から国語・算数・社会・理科各40分(100点)で行われた。
第1回、第2回、第3回とも、成績優秀者は特待生として1年間の授業料相当額が支給される。特待生候補になった受験生には通知が届くため、希望する場合は規程に従って手続きをすれば実質学費が減免される。
同校中等部1年次の入学金は23万円、授業料は43万2000円。維持費、施設設備費などを合計すると年間92万4000円を支払わなければならない。
授業料の減免は家計にとって相当うれしい話だ。
もう一度、公表されている21年主要大学合格実績を振り返ってみよう。
現役合格者数は東大1人、京大1人、東工大1人、北大2人、東京農工大5人、東京都立大8人、早大29人、慶大18人、上智大13人、東京理科大28人。他には明治91人、日大72人、中央54人、法政44人などが目立つ。
東京農大など併設の大学への推薦入学率はわずか7.1%だった。
子息を農大中に入学させた会社員は「準難関校に落ちたためすべり止めで受けたこの中学に入学しましたが、
意外にも多くの難関私大や地方国立大の学校推薦型選抜の指定校になっていて、私の子どもはそれを利用して地方の国立大学に入学しました。
中学入試では挫折しましたが、結果オーライだったと思います」。
「大根踊り」だけでは捉えきれない農大中入試の実情が興味深い。4日は他に豊島岡女子学園中学でも3回目の入試が行われた。