もくじ
中学受験の合格を決めるのは「母親の力量」で決まります【1】
なのに、大輝は午後3時前には帰ってくるはずの水曜日に、友達とサッカーをして、帰宅は4時半ですよ!遊び疲れて、帰ってきてからもグズグズだらだら、
勉強を始めるのは結局7時を回ってから。遊ぶのがいけないと言っているんじゃないんです。のびのび過ごす時間も持たせてやりたい。でも、とうとうあと1年を切って、そうも言っていられないじゃないですか。
いいかげん、本気になってくれないと、志望校は夢のまた夢。そのくせこの前は、「○○中学絶対合格!」と書いて壁に貼ったりするんです。あの子は、いったい何を考えているんでしょう。やる気があるのかないのか、母には理解不能です。
そういえば、同じマンションの同級生、朋哉くんは同じ塾の最上位クラス。うちの子は上から3番目のクラスです……。
全然顔つきが違います。朋哉ママいわく、「勝手に朝早く起きて、勉強してから学校に行っている」。なんで同じ年でこんなにも違うんでしょうか!どうすれば、大輝も本気モードになってくれるのでしょうか。
―Question
子供が6年生になると、親の側の焦りはぐっと増していきます。
ところが、当の本人は相変わらずのんびり。そのくせ「絶対に合格する!」と、志望校への意気込みだけは立派なもの。よくあるパターンですが、親からすると困ってしまいますね。
さて、プロの学習コンサルタントは、大輝くんをどう分析すると思いますか。
(1)表面上はともかく、実は志望校への気持ちが本物ではなく、気持ちが乗っていない状態
(2)志望校への気持ちは本物だが、日々の勉強は面倒くさいと感じている状態
1 基本の考え方 専属コンサルタントになれるのは母親だけ
ママにわが子専属の学習コンサルタントとして腕を振るってもらえるよう、受験のプロの視点を学んでいただきます。
その核となるのが「学習サイクル」の考え方。これは、受験勉強を「複数の要素(ステップ)が循環するシステムである」ととらえるわれわれ独自の手法です。
本来は8ステップあるのですが、今回は最重要の4ステップに絞ったシンプルバージョンを用います。
学習サイクルでは、どれか1つのステップだけに注目するのではなく、全体の流れを重視します。1つのステップをいくら強化しても、次のステップが弱いままだと、最終的な学習成果も弱点要素に引きずられて伸び悩むからです。
たとえば、宿題のやり方に大きな問題のある子は、まず宿題を重点的に改善することで、学習サイクル全体のバランスが取れ、サイクルが加速し始めます。
塾に通っていれば、学習の進め方も身につくと思われがちですが、よほど面倒見がいい塾をのぞいては、塾が学習サイクルを管理してくれることはありません。
講師が生徒1人1人にかけられるエネルギー量は限られ、一律の指導になってしまうのです。つまり、たいていの場合、手厚いマネジメントができるのはママだけなのです。
さっそく第1ステップ、やる気の管理方法を勉強しましょう。
2 診断問題の答え
やる気の管理を考えるうえで、大人が勘違いしやすいのは、大きな目標を持てば、子供はやる気になると思うことです。
大人は3カ月先を見通して「今」を考えることができますが、子供は1週間先を見るのがせいぜい。
志望校への憧れ、願望は強くても、1年先の目標と、目の前の学習とは結びつかないのが普通。目の前の勉強に対して、やる気が高まっていない状態では、
いくら志望校への思いをはっきり持っている子でも、日々の勉強を面倒だと感じてしまうもの。
つまり、目標とやる気はまったく別に存在するのです。「やる気がないなら、受験なんてやめてしまえ!」と叱る方もいらっしゃるでしょう。
しかし、子供の志望校に入りたい気持ちは本物ですから、「なんで、そんなひどいことを言うの」となるわけです。
大輝くんも志望校への思いは本物でしょう。でも、やる気をどう高めたらいいのかがわかっていない。したがって、問題の正解は(2)。
夏休みを過ぎて入試が近づいてきたことを肌で感じられるような時期になれば、子供の目標とやる気が一致していきますが、それまではママがやる気を管理し、
学習サイクルを循環させていきましょう。では、やる気はどう高めていけばいいでしょうか。
3 やる気を高めるモデルを設定するアクション(1) モデルを設定する
ママが導入しやすい手法として、「学習のロールモデル」を見つけるやり方があります。たとえば、成績上位者のクラスにいる友人。大輝くんの場合は、朋哉くんが適任でしょう。
具体的には、「朋哉くんって、いつ勉強しているんだと思う?」と子供に問いかけ、イメージを促すのです。
やる気の見えない子に対して、「あなたはどうしたいのよ」と問い詰めても、本人の中に学習の具体的なイメージがわいていないわけですから、あまり効果はありません。
その点身近な友達を想像するのは、子供にとっても簡単で、また自分自身に置きかえて考えるきっかけにもなるものです。
「きっと、寝る時間をけずって勉強しているんだ」と、とっぴな発想をする子もいますが、「でも、いつも元気な顔をしているんじゃない?
外遊びも好きだし」と、その子の日常の姿を思い出させてやる。そういったやりとりのなかで、「じゃあ、朝早く起きて、勉強しているんじゃないかな」などと子供自身が気づくように仕向けるのがポイントです。
モデルとなる子の生活を想像することで、「あと少しがんばってからオヤツにしよう」とか「この問題までやってから寝よう」とか、日々の小さな決断に変化が生まれます。
4 やる気を高めるアクション(2) レベルアップの物語を描く
多くの塾では、クラス分けに関係するテストが毎月行われますが、これを利用します。まず「クラスが上がるために何点必要だったのか」を親子で共有します。
「4教科で30点及ばなかった」という「得点不足」の確認で終わらず、「算数はあと15点、残り3教科で5点ずつ取れば上がれたんだ。何とかなるかも」と、次回に成功できる実感まで共有するのがポイントです。
成績がいい子の共通点の1つに、「偏差値を取りにいける」ことがあります。「あと何点プラスできたら、偏差値はこのくらい上がる」という位置取りの感覚を持っているのです。
それに対し、成績が安定しない子は「受けてみないとわからない」という言い方をします。位置取りへの感度が鈍く、「やれる気」になりにくいのです。
今回のテストは前回、前々回と比べてどうだったのか、そして次回はどこまでを目指そうか?
それは実際に取れそうな点数か?
子供が「やれる気」になる目標を設定します。「やれる気」がすることに対しては、子供は「やる気」を示します。
ママが成長のストーリーをつくってやることで、「あと5点上げるために、もう少しがんばろう!」という「やる気」を子供から引き出せるというわけです。