もくじ
中学受験の合格を決めるのは「母親力量」だというのは本当ですか【4】
6年生になっても、7月くらいまでは新しい単元を習うそうです。だから、宿題は軽視できません。宿題とテスト直し、どっちも手つかずでは困るので、宿題を優先することにしました。
でも、すっかりテスト直しをしない癖がついてしまったようで、冬休みにこれまでたまったテストを直させようとすると、ひどく嫌がって……。結局ほとんどできませんでした。今やテストは完全に受けっぱなし状態です。
宿題とテスト直し、どちらを優先すべきなのでしょうか?それとも、寝る時間を削ってでも、宿題とテスト直しは両立させるべきでしょうか?
―Question
6年生になると、時間的余裕が一気に失われていきます。目の前にある課題のすべてをこなすことは不可能。何かと何かをてんびんにかけ、どちらかを捨てるという判断を迫られます。テスト直しはしたいけれど、宿題も削れない。
プロの学習コンサルタントは、このジレンマにどう対処すると思いますか。
(1)宿題を優先させ、時間が取れたときにテスト直しをする
(2)宿題を削ってでも、テスト直しを優先させる
(3)テスト直し、宿題、それぞれ削って両立させる
1 基本の考え方 テストには2つの機能がある
読者のみなさまは、テストにどんなイメージをお持ちでしょうか?
ご自身の経験から「いつも緊張した」「テスト勉強がしんどかった」というネガティブな声が聞こえてきそうです。そして、「テスト=実力が試される場」という認識をお持ちの方も多いでしょう。
しかし、私たち学習のプロはテストが単に「実力を測る」ためのものではなく、「未来を設計する」ためのものと考えています。「テストのたびに勉強を上達させていく」のが、成績アップへの近道なのです。学習サイクルを循環させるうえでは、「実力を測る」よりも「結果を利用する」のがテストの本質です。
その結果から何を学べるか、次に生かすポイントは何なのかを、テストの分析から発見していくのです。
ですから、「テスト直し」も、間違った問題をもう一度頑張って解いてみるだけでは、効果は半減します。何ができていて、何はできなかったのかを正確に分析し、次の学習につなげていくことこそがテスト直しの真の目的です。
2 診断問題の答え
授業管理を「盲点になりがち」とするなら、テスト管理は「やったつもりになりがち」な要素です。
入試がやり直しのきかないものであるために、テストも「受けたら終わり」と考えやすいからです。親子とも、結果が出た時点で、「終わった」気分になりやすく、テスト直しというと、春菜さんママのように、間違った問題を解き直すことだけにしか意識が向かわないのです。
問題を解き直すだけなら、宿題をこなしているのと同じ作業に見えてくるのは、自然な流れです。
実際、春菜さんはテストの解き直しに手こずり、宿題とのバランスに苦しんだ揚げ句、目の前の宿題を優先することになりました。どうせ問題を解くのなら、先生からチェックされる宿題を優先したい気持ちはよくわかります。
しかし、本来のテスト直しとは、テストでどのように得点していけばいいのかを分析する時間でなければなりません。つまり、宿題とはまったく違うプロセスなのです。
さて、ここでもう一度、学習サイクルの概念を思い出しましょう。
どの要素も詰まらせずに勉強を進めるのが、成績を上げる近道という考え方でした。テストのレベルは低いままというわけにはいきません。宿題とテストのバランスを取っていくことこそが大切なのです。したがって、答えは(3)です。
では、どうすればバランスを取っていけるのでしょうか。それには、テスト分析を効率よく行うテクニックが役立ちます。
そのうえで、「1年後の合格を決める「ママの力量」診断【3】 宿題はどこまで欲張るべきか」のAnswer(>>記事はこちら)を参照しながら宿題に取り組むことで、睡眠時間を削ることなく、最適な学習バランスが見えてくるはずです。
3 テストで伸ばすアクション(1) 「正答率」をチェックする
実は、テスト管理で重要視すべき材料は、テストの後に配布される各問別の「正答率表」です。正答率をもとに、解き直すべき問題の仕分けを進めていきます。間違えた問題のうち、正答率が50%を超える(2人に1人が解ける)ものがあれば、もれなく対象とします。
よく言われることですが、100から志望校の偏差値を引いた値を参考にしてもいいでしょう。志望校の偏差値が55なら、100-55で正答率45%までの問題は解けるようにしておくわけです。
さらに正答率が低い難問であっても、「できそうだった」問題も解き直しの対象にします。そういった問題は子供の「得意な分野」である可能性が高く、得点源になるからです。
正解しておくべきだった問題がはっきりすれば、学習サイクルのステップごとに、どんな努力が必要だったのか、具体的な未来設計に入ります。学習サイクルの流れを好転させることを意識するのがポイントです。
4 テストで伸ばすアクション(2) ケアレスミスの本当の原因を突き止める
正答率の高い問題を間違えた場合、「できていたはず」と判断して、親子共に「ケアレスミスでしょ」で済ませがち。単純に「集中力が切れていた」と結論づけるママもいます。
しかしプロは、ケアレスミスと集中力の有無とを安易に結びつけません。ケアレスミスはママが思うほど簡単な問題ではなく、精神的な問題や技術的な問題に起因することが多く、実はちゃんと理由があっての不正解であることが多いからです。ですから適切な手当てを行わないと同じミスを繰り返す可能性が高いのです。
たとえば、式の段階では合っているのに答えを写し間違えてしまう子は、目の前の問題を完了させる前に、次の問題を読み始めるクセを持っていることが多い。クセですから、修正しない限り、同じ行動を繰り返してしまいます。
また、根っこには「テスト中に過度に焦りやすい」というメンタルの問題を抱えているのかもしれません。これも改善するにはトレーニングが必要です。
ケアレスミスの原因を正確に突き止めるには、テスト中の様子を上手にインタビューすることと、わが子が問題を解いている様子を家にいるときに、よく観察してみることです。ママにとって、完遂は簡単ではありませんが、ひとたび原因を突き止め、対処できれば、かなりの確率でケアレスミスをなくすことができます。